URTA代表の海野優です。いつもブログを訪問いただき、有難うございます。本日、皆様にお話をしたいのは米国への留学・赴任時における「海外転出(住民税)」と「国民年金」「国民健康保険」に関する各種手続きについてです。これらの手続きについて、ほとんど詳細についてご存じの方は少ないかと思います。しかし、これらにかかる手続きを出国前にきちんと済ませておかないと、例えば「日本国内で生活をしていないにも関わらず住民税等の加算対象となる」ことや「納税管理人を選出しておらず住民税の督促状が市区町村から発送される」「国民年金に任意加入していなかったために「遺族基礎年金」や「障害者基礎年金」を貰えない」といった深刻な事態に遭遇する可能性がありますので、必ず出国前にこれらの点を最寄りの市区町村の窓口に確認しましょう。
海外転出と住民税について
「海外転出」とは、おおむね1年以上の期間、海外に旅行または赴任する人が対象となる住民票転出にかかる手続きです。国内での住民票の転出・転入と同じように市区町村窓口の戸籍・住民票の係で対応をしてくれます。具体的には海外転出をする14日前から申請が可能ですが、出国後であっても14日以内の申請を推奨しており、代理人等が申請しても問題が無いようです(参照:横須賀市ホームページ)。住民税との関係では、1月1日時点で住民登録があれば住民票住所地の住民税の課税対象となりますが、海外転出によって1月1日時点で住民登録が無ければ当該年の住民税の課税対象となりません。また1月1日以降に転出した場合でも、翌年の1月1日時点で帰国せずに海外転出の状態であれば、翌年の住民税は課税されませんので、出国時期に関わらず海外転出届は出す方が良いでしょう。また年の途中で海外転出する場合は残りの住民税を一括で納付してから出国するか、納税事務に関する一切を代行する「納税管理人」を選任する必要があります。納税管理人を選任しないと市区町村は納税通知書が送付できず、最悪の場合督促状の発送を受けたり、延滞金が加算される場合もありますので、必ず選任・申請をするようにしてください(参照:渋谷区ホームページ)。
なお課税に関する詳細については必ず住民票住所地の市町村窓口にて、出国前に担当者に直接確認されるようお願いします。例えば、泉佐野市では海外転出者の目的や居住状況に応じて、仮に海外転出の届け出をしていても、住民税の課税対象となる可能性があることについてホームページで明示しています。ゆえに、本ブログの情報のみで課税対象となるか否かについての判断は絶対にしないでください、仮に何らかの不利益を被られた場合でも、私どもは一切の責任を負いかねます。
国民年金・国民健康保険について
政府機関や大学、病院、企業等にお勤めの方は、所属する組織の総務・人事担当者に共済(厚生)年金と健康保険に関する手続きを代行して貰えると思います。しかし、例えば「日本学術振興会特別研究員」や「非常勤講師」「学部生・大学院生」などの身分で「国民年金」「国民健康保険」に加入されている方で、米国に留学・赴任される際に必要な手続きについて、詳しくご存じな方はあまりいらっしゃらないかと思います。今回はこれらの手続きについて順を追って説明をさせて頂きます。なお、国民年金第2号被保険者(厚生年金・共済年金)の方、国民年金第3号被保険者(国民年金第2号被保険者に扶養されている配偶者)の方については、以下の手続きに該当しませんのでご注意ください。
国民年金について
日本国内に居住する20歳以上60歳未満の方は、国籍や性別を問わず全て国民年金の被保険者となり、保険料を納める義務が生じます。海外に赴任される場合に市区町村窓口で「海外転出届」を出して、海外に転出するという手続きをおこなうと、戸籍・住民票係から国民年金係へと案内されます。市町村窓口の国民年金係では、国民年金に「任意加入」をするか否かについて確認をとられます。つまり海外への転出により、強制的に保険料を徴収される身分ではなくなり、仮に保険料を納付しなくとも督促を受けることがなくなるわけです。仮に任意加入をする場合、保険料の納付には「日本国内に残した銀行口座からの引き落とし」あるいは「家族などに納付を依頼する」という2つの方法がありますが、納付に手間がかかるのは事実です。
しかし、国民年金の制度を考慮すれば、可能であれば国民年金の任意加入をし、保険料を納付すべきであるといえます。なぜなら国民年金加入者が事故や病気で死亡あるいは障害を負った場合、日本年金機構は「遺族基礎年金」または「障害者基礎年金」を支給してくれるからです。
ゆえに、米国での万が一の事故や病気を考慮すれば、任意加入をすることにメリットがあるということです。なお日本国内の大学・大学院等の在学生向けの納付特例である「学生納付特例」は、海外大学や大学院に留学する際には利用することが出来ません。よって、留学をされる方が30歳未満の場合で所得が十分に無く、国民年金の納付が困難な場合は「学生納付特例」ではなく「若年者納付猶予制度」を使うと良いでしょう。「若年者納付猶予制度」は市区町村窓口の国民年金の係で申請可能であり、該当期間内に事故や病気で死亡または障害を負った場合は「遺族基礎年金」または「障害者基礎年金」を受け取ることができます。詳しくは日本年金機構のホームページや住民票住所地の市町村窓口に問い合わせをおこなってください。
国民健康保険について
国民健康保険は海外転出をおこなう際に「資格喪失届」を市区町村の国民健康保険係に提出し、保険証を返却する必要があります。その段階で被保険者の資格を喪失し、国民健康保険税の支払いの義務は無くなります(参照:横浜西区ホームページ)。しかし、一時帰国した際に国民健康保険を使って歯科治療などを受けたい場合は、改めて「転入」手続きを市区町村窓口においておこない、国民健康保険に加入する必要があります。ここで気をつける必要があるのは、再度転入をした時点で国民健康保険税の支払い義務が発生するということです。また出国する際には、改めて保険証を返却し「海外転出」の手続きをする必要があるため、これらの手間やコストを考えれば転入手続きをおこなわず、自費にて診療を受けた方が良いと考える方もいらっしゃいます。必ず市区町村窓口に相談のうえ、転入手続きをするか否かを判断されると良いでしょう。
記事の執筆には事前のダブルチェックなど万全を期しておりますが、万が一記載内容に誤り等があればお知らせいただければ幸いです。また、繰り返しますが私どもは当ブログの記事をもとに受けた不利益の責任は一切負いかねますので、必ず出国前にお近くの市区町村の窓口にご自身の責任で確認をしたうえで手続き等をお進めください。長文となりましたが、今日もブログをお読みいただきまして有難うございました。
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